
TANKURI ―創造性を撃つ―
本書で展開した創造=作品化=日本画作品とは、外部からの召喚のための感覚を全面化し、待つことであった。それは、「わたし」において、抽象的な意味での意図と実現のギャップの、切断と接続の共立を徹底させ、異質なものがギャップに降臨することを受け容れることだった。そして、切断と接続の共立を実現する仕掛けもまた、異質なものの連続を必要とするのだった。
藝術とは、反復の危うさに対する感性である。記憶し、想起する反復だけなら人工知能もやっている。現代社会は、あまりにも、反復を対象化し能動的に操作する営為を求め過ぎた。反復の危うさがデジャブをもたらし、個別と普遍を共立させ、時間を、この生を創り出す。この意味で藝術は、これからの科学や工学の基礎さえ与えるものなのである。

内容紹介


第11章 花喰鳥(往復書簡)
[ 目次 ]
テクノロジカル・メカニカル/マジカル日本画
キッチュの向こう側
ラ・ヴェネツィアーナ
絵画とベルグソンの過去
宇津の山図屏風
向こう側の抽象性
「やってくるもの」の無関係性
マジカル日本画としての中村作品
著者略歴
中村恭子(なかむらきょうこ)
日本画家。
早稲田大学招聘研究員、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所フェロー。
1981年生、東京藝術大学卒業、同大学大学院博士後期課程修了(博士(美術))。
展覧会に、「シンビズム展」(諏訪市美術館、2018)、「中村恭子皿鉢絵巻展(Art Space Kimura ASK?、2017)、「中村恭子日本画作品展」(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所、2015)など多数。
書籍装画に、《蛸工図》(郡司ペギオ幸夫『いきものとなまものの哲学』(2014、青土社))、《生殖の線―スペキュラム―》(松田修『刺青・性・死 逆光の日本美』(2016、講談社学術文庫))、《百刻みの刑》(V・ナボコフ『アーダ』(2017、早川書房))などがある。
郡司ペギオ幸夫(ぐんじぺぎおゆきお)
早稲田大学基幹理工学部表現工学科教授・神戸大学名誉教授。
1959年生、東北大学理学部卒業、同大学大学院博士後期課程修了(理学博士)。
1987年神戸大学理学部地球科学科助手、助教授を経て1999年教授、2014年より現職。
主な著書に、『原生計算または存在論的観測』(2004、東京大学出版会)、『生命理論』(2006、哲学書房)、『生命壱号』(2010、青土社)、『群れは意識をもつ』(2013、PHP新書)、『いきものとなまものの哲学』(2014、青土社)、『生命、微動だにせず』(2018、青土社)、『天然知能』(近刊、2019、講談社)などがある。
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